サンクトペテルブルグ(SP)のイメージとしてよく使われる特徴的な聖堂です。
血の上の救世主教会という名前が若干怖いですが、実際、ロシア皇帝アレクサンドル2世がこの場所において爆弾により暗殺されたことによるということです。後継のアレクサンドル3世が先帝を弔うために1883年この教会建設を指示しました。そして、完成したのは1907年で、ほぼ近代、140年程度しかたっていません。かなり新しい教会であることが分かります。
立地
ネフスキー通りから多少奥まったところ、運河に若干迫り出している所の立地です。当時の街並みがどうだったのか不明ですが、この運河沿いの通りを皇帝が車で通っている時に暗殺されたということです。その場所に無理やり立てたので運河に張り出した感じになっているのでしょう。運河の流れを妨げて大丈夫なのかは気になるところです。
外観
モスクワ赤の広場のワシリー寺院に似ておりロシア独自の建築様式となっています。正面が分かりにくい複雑な形状で、見る方向によりスタイルがかなり変わります。
この北側からのファサードがよく見られますが、玉ねぎが非常に個性的です。デザインも多様で、色は茶色ベースに金色と青、緑、白で統一感があります。
教会内部
特徴的な外観に負けないくらい内部も個性的でした。カザン聖堂やイサーク大聖堂など1800年代に作られた聖堂とは造りが完全に異なります。内部は青ベースに全面モザイク、柱にまでイコンが描かれ、独特の雰囲気です。
建築費は献金により集められたということです。そのため、貴重な石材を揃えられなかったためにモザイク装飾とした可能性はありますか。両聖堂と比較すると、比較的こじんまり、柱の間隔も短くお祈りのための広いスペースが見当たらないのもその影響かもしれません。
センタードームには、アニメチックなキリストさんが描かれています。また、ライトアップされているように見えますが、ドーム側面の窓からの自然光で照らされています。よく考えられています。
よくみるとキリストさんは天使に囲まれています。
そして、これらの肖像は全てモザイクタイルで作られています。アニメチックに見えるのも色数が少ないタイルで表現しているからでしょう。モザイクの場合、輪郭の細さにも限界がありますからね。
また、モザイク技術は同じ正教会、東方正教会のかつての総本山であったイスタンブールのアヤソフィア内部のモザイクに共通しているとも言えます。
主祭壇
主祭壇に近づいてきました。他との違いは金色の割合が多くなるのが一つの特徴でしょうか。
そして正面のイコノスタシスは、彫刻は派手ですがシンプルに見えます。他が派手派手ですのでこちらの方が落ち着いた印象を受けます。
なんとなく築地本願寺の外観に近いような・・・ロシア正教の外側の玉ねぎはトーチをイメージしているということですが、この辺や築地本願寺のはドームは何をイメージしているのでしょうか。色々と気になります。
不思議な教会でした。
まとめ
SPの象徴として一番使われる「血の上の救世主教会」を訪れました。他の建築はいくらか西洋建築の影響を受けていますが、こちらは1900年前後という比較的最近、ロシアの独自文化を意識した時代背景を受けてロシア建築の独特なスタイルです。
個性的な外観に加え、内装も非常に個性的、全面モザイクで、よくある教会、聖堂の印象とはかなり違っていました。作りとしては、どちらかというとアヤソフィアに近い印象を受けました。規模としては多少小さいですが・・・
一方で生い立ちとしては、皇帝暗殺の場で皇帝を弔うために作られたということで、文化的なバックグラウンドはあまり大きくはありません。それでも世界遺産として登録されているという点で一見価値ありといえるかと思います。やはり観光としても非常に人気でかなり混雑はしていますが、ネフスキー通りからも程近く観光で立ち寄るのには便利な立地と言えるかと思います。
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