何をきっかけにこの都市を知ったのかは今となっては定かではありません。バトゥミは、特にロシアから人気の黒海ビーチリゾートでカジノも多く黒海のラスベガスと呼ばれています。2010年以降そんな観光ニーズをターゲットにリゾートコンドの不動産投資が活発化しビーチ沿いにはタワマン、高層コンドミニアムが林立しています。
2020年に入ると、コロナ、ロシア・ウクライナの武力衝突があり、ロシアからの渡航客は減少しました。カジノも主要なプレーヤーである中国からの旅行者はあまりおらず、また中国自体もバブルが崩壊しパワーが落ちています。そんな状況の中、黒海のラスベガスがどうなっているのかリゾートステイを兼ねて偵察してきました。
バトゥミ
バトゥミはジョージアの中では首都のトビリシに続き第2の都市ではありますが人口は20万人とちょっと小規模です。夏にはロシアを中心に年間200万人の観光客が訪れます。200万人はそれほど多くはありませんが、定住人口の10倍ではあり、その滞在先としてリゾートコンド/ホテルが開発されてきました。
ビーチリゾート
ビーチリゾートではありますが、砂のビーチではなく礫のビーチです。この点は、日本人から見ると見慣れないところではありますが、ヨーロッパでは地中海沿いなども礫ですので普通のようです。訪れたのは7月上旬で、夏のバケーションシーズンとしてはちょっと早い時期でした。それでも昼間にはビーチチェアが並び、それなりに観光地の体をなしていました。場所によっては超大規模なビーチクラブが設営中でした。まだ未完成でしたが、ビーチ沿いは深夜1時まで重低音が響き渡ってたので、完成時には一層賑やかになるでしょう。苦手な方はビーチフロントの宿、コンドは避けた方がいいかもです。
カジノ
カジノは多くのホテルに併設されていましたがあまりオープンな感じではありません。ラスベガスやマカオなどでは、観光客に向けてもオープンで、マカオなどはフラフラしてると身分チェックもなしに入り込んじゃったりしますがかなり入りにくい感じでした。ガチ系で観光ついでにという位置付けではない感じでした。
ショッピングモール
ほとんどの大規模開発案件では階下にショッピングモールを作る感じで進められたようです。一方で、定住人口20万人、観光客が来るとはいえせいぜい200万人、しかも夏に集中しがちという季節性でそれほどの商業施設ニーズはありません。となると売れるコンドフロアだけを先にデリバリー、商業エリアなどはテナントが集まるまで後回し、ずっと集まらないと実質未完のままサスペンドになっている物件も多いです。後述Orbi Cityもレジデンス階はデリバリー済みですが、1、2階のショッピングモールのフロアは未完成でコンクリ剥き出しのままです。街全体に未完成の工事エリアが残るのはちょっと見栄えがイマイチですね。
観光以外の産業
バトゥミは首都でもないため、公的機関もなく、観光以外の産業も育っておらずオフィスビルも皆無です。そうした状況の打開を目指してか、貿易センター/MICE機能の開発が着手されているようです。が、うーん、どうでしょうか・・・貿易に関してはシンガポールのように中継貿易の拠点に便利な立地でもないですし、一帯一路の経路になっているわけでもないです。MICEとしても、バトゥミ空港は10都市程度との路線で、国際的なアクセスはいいとは言えないです。いずれもちょっと厳しい気がしますね。
外国人の不動産保有/自己居住
外国人の不動産所有規制は特になく、固定資産税は個人所有の場合は個人所得により0〜1%です。
日本人はVISAなしで365日までであれば活動内容に関わらず滞在可能です。ということで、投資目的を軸に、自己居住というオプションを加味しての不動産保有という観点では悪くない条件といえます。高層マンションの歴史は浅いので、維持管理がちゃんとできるか長期視点でのリスクは若干高めかもしれません。
物件
そんなバトゥミ滞在は、あくまでリゾート滞在メインではありますが、上記視点もふまえホテルコンドに滞在、散策の合間に物件もついでに見てきました(外観、周辺環境まで)。それらをまとめておきます。
Alliance Group
ジョージア最大級のディベロッパーですでにいくつかの開発案件を完遂している点で一定の評価があります。バトゥミ空港の到着ロビーから該社の物件の宣伝がいっぱいありました。いずれも奇抜なデザインで目を引きます。
Alliance Palace Batumi
41階建ての高層ビルで微妙に中層が張り出す独特な意匠が特徴的です。2019年に完成、全体で1,000戸の大規模ホテルコンドです。高層階が独立してCourtyard by Marriott、中層以下が別のホテルコンド&アパートメントでAlliance Palace Hotelとして運営されています。
で、せっかくなのでここにAirbnbで滞在してみました。19階海側東向き角部屋1BRでしたがなかなか快適でした。近いところで21階の海側西向きの角部屋が中古でUSD 166,900(2,300万円)で売り出し中です(2024.1現在)。1泊USD 100程度でしたので年間100泊程度入ると表面利回りで6%位です。経費率が50%とすると実質利回りで3%位でしょうか。
物件の様子はこちらを参照ください。
2024.1現在、100件強のリセール物件が出ており、買うのは容易ですが売却はかなり厳しくなるかと思います。興味のある方はこちらからどうぞ。スタジオであればUSD 65,000(900万円)からあります。
Alliance Centropolis
2024.1現在開発中の物件です。高層ビル3棟、階下は先に述べたMICE目的のコンベンションセンターになるようです。竣工時にはHyattがホテルとして入居予定のようです。2020以降、コロナ、ロシア情勢からの観光客が減っている状況ですが、訪れた時には実際クレーンが稼働中でした。
眺めのよい外側の物件はほぼ売れているようです。新築スタジオタイプでUSD 100,000(1,400万円)〜
Orbi Group
比較的リーズナブルなコンドミニアムを大量に開発しているのがOrbi Groupです。
Orbi City
ファウンテン前の1等地に47階建てのコンドホテルを5棟建てています。2棟はすでにデリバリー済み、3棟が建設中で最終的に6000部屋になるということです。他のディベロッパーでは中止案件が出てきている中で比較的元気に開発中です。
デザイン的には47階建てなのに何の変哲もない板状で容積率重視、収益性重視でちょっと好みではない感じです。ただ、バルコニー外側にはフルカラーのライン照明が埋め込まれており、夜にはジョージアの国旗や幾何学的なデザインが表示され綺麗です。バトゥミのシンボル的な存在にはなっています。
一方で、階下は例に漏れずショッピングモールの計画でしたがその部分はテナントが集まらないのか工事が止まっています。このままずっと開発されない可能性も高いのでその点は確認が必要です。
しれっとロビーに入ってみましたが、さすが1,000戸/棟あるだけあって混雑していました。これだけいれば商業施設も少しづつでも整備してもいい気もしますが・・・
Orbi Cityの北西側にはOrbi Sea Towers(王冠の3棟、2015年デリバリー済)、その奥の白い高層ビルがOrbi Residence(2015年デリバリー済)と、Orbi Groupが開発した物件が並びます。これらは比較的安め、USD 40,000(560万円)〜で2次流通しています。
https://korter.ge/en/orbi-sea-towers-batumi
https://korter.ge/en/orbi-residence-batumi
Metro Avrasya Georgia
個人的に嗜好があうデベロッパーです。
Metro City Residence Batumi
派手さはないですがバトゥミで一番まともな(稼働している)ショッピングモール、そこそこのレベルのホテル、カジノとの複合施設です。敷地面積は広く、隣地は大きな公園(トップの写真の緑地)、その先はビーチということで、将来に渡り眺望が遮られることはありません。ただ、土地取得原価が嵩む一方で戸数が少ないので他の物件に比べて価格は高め(USD 80,000 = 1,120万円〜)でちょっと利回りはよくなそうです。全然売れておらず、そうなると維持管理にも懸念が残ります。
2017年完成ですがショッピングモールの中にまだセールスオフィスが設置されていました。でも一回こうなっちゃうと事態打開は難しいでしょうね。ショッピングモール自体は小売店が過剰供給気味なBatumiでそれなりに繁盛していました。おいしいトルコ料理の食堂などもあり悪天候時にも中からアクセスできて便利そうです。スーパーも入居していますが品揃えはイマイチでした。背後に他社のコンド開発が進んでいるので居住者の増加が進めばスーパーは改善する可能性はあります。
West Towers by Metro
72階建+60階建という先進国でもなかなかないプロジェクトで目を引きましたが残念ながら多分サスペンドです。形状も特徴的で全面ガラス張りで好みです。イメージパースで左側にうっすら書かれているのがAlliance Palaceですのでちょっと高さは誇張していますが高層からのビューは絶景でしょう。建築予定地は全く建設の気配はありませんでした。↑のMetro Cityが多分失敗ですので資金繰り的にも多分望み薄ですがもし着手するのであればちょっと興味ありです。
ほか
Azure Tower(MC Construction)
こちらも旧市街よりのビーチフロントで、全面ガラス張り47階建てで魅力的な物件です。もともと2018年竣工予定でしたが2024.1時点でまだ未完成です。Salesは、一時期間取りなども出ていましたが値段はTBC(To Be Confirmed)です。ただ、私たちが訪れた2023.7以降も建設は徐々に進んでいるようです。立地も便利で先端の部屋は全面窓で絶景が期待で物件としてはかなり魅力的です。
ほかにもヒルトンホテルとの2棟建てのレジデンス(高い、USD 250,000=3,500万円〜)や、バトゥミタワー近接のレジデンスなど、高層建築ファンとしてはかなり興味深い建物が集まっています。
まとめ
日本では(世界でも?)全然知られていない都市ですが、黒海のラスベガスと呼ばれるバトゥミに滞在しました。そうした特徴的な都市で安いコンドもたくさんあるということで、そんな観点でも一部見てきました。
都市のポテンシャルとしては、現状産業はビーチリゾートだけで、貿易センターやMICEの機能を持たせようといった取り組みもあるようですが実現するかは見極めが必要かと思います。
その一方で物件は安いですが、物件によっては5年経っても売れてない物件、工事中にサスペンドになっている物件も出てきています。ちょっとイケイケの開発に、街全体がついていけていない印象を受けました。
とはいえ、高層建築好きとしては上記の状況を鑑みても実需として見るとコスパが良いと思える物件も多く色々と楽しめました。今後どう発展していくのかウォッチを続けたいと思います。
バトゥミ市街北側にはこんな妄想もあるようです・・・
クルーズ船も描かれていますが、地中海の奥の黒海の奥ですからね・・・誘致できるかどうか、まずはロシア情勢が落ち着くことが必要条件でしょうね。
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