南アフリカのサファリは相当プロフェッショナルだった

テクニック
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クルーガー国立公園でのサファリの事例です。

アフリカ南部に訪れる方であれば、プランの中にサファリを組み込むことを計画すると思いますが、サファリ というのがどんなものなのかご紹介します。

2016年のチョベ国立公園ではドライバー兼ガイドが1人で動物を探しつつ運転する感じでしたが、クルーガーでは動物探しを行うトラッカーと、運転・ガイドを行うドライバーの2人体制でした。なんぼのもんかと思っていましたが、この2人体制の必要性、底力を見せつけられることになりました

ケース@Manyeleti GR

この日のゲストは私たちのみ、期せずしてプライベートサファリになりわがまま言い放題です。一方でロッジからのサファリカー出動が1台のみということで、別ルートで捜索する仲間の車とトランシーバーで情報交換できず遭遇確率としては分が悪い日でもありました。

出発前に私たちが今まで見た動物の再確認があり、特にビッグ5の中で難易度が高くまだ見れていないヒョウとサイの2つをターゲットにコンプリートを目指そうということになりました。私たちは、自分たちが運のいい方ではないことは自認しており先の状況を考えるとなかなか厳しい状況だなーなどと考えていました。

特にヒョウは、初日夜にちょこっと話したイギリス人夫妻は4泊計8回のサファリでようやく1回見れて良かった〜と言っていたことを考えると、私たちはまだ2泊目、4回目のサファリ、私たちは「このトラッカー&ガイドの能力と私たちの不運さのどちらが勝つか」などと話をしていました。

マンイェレティゲームリザーブ Manyeleti GRの特徴はこちらをどうぞ。

6:45 高速長距離ドライブ

仲間の車と情報交換できないということは、当然ながら自車のみで見つける必要があります、サファリの時間は多少はガイドにゆだねられていますが1回の目安は3時間程度です。朝夕3時間程度のサファリが多いのは、動物が活発な時間帯で、明るく探しやすく一番遭遇確率が高い時間帯がこの時間ということで、やみくもに時間を長くすればよいというわけでもありません。では、その一定時間内で遭遇確率をあげるためにはどうすればよいか、、、がんがんぶっ飛ばして走行距離を稼ぎます、走行速度自体も高め、目的のレア動物以外の動物がいても大抵止まりません

となると朝一は超寒いです。その寒さに対抗するためジープに完備されているポンチョと自前のストール、サングラスで完全防備の人が約1名、ちょっとやりすぎじゃないですか???前見えてるの〜???

3年前のチョベではホロホロ鳥でもとまっていたのに、ここでは今回の滞在で初めて遭遇したウォーターバックもスルーされそうになりました。

ちょっと待ってといって止まって車のエンジンを切ってもらいました(高倍率ズームの場合、エンジンの振動でも手振れが起こるので)。

それ以外は、大通りであろうと小道であろうとぶっ飛ばします。

補足 : トラッカーの目

で、トラッカーは、目的の動物の姿だけを探しているわけではありません。ターゲットの捕獲対象の草食動物の動き(追われている、警戒している、といった視線、鳴き声など)砂、土に残された動物の足跡(どこに向かっているか、単数か複数か、歩いてるのか走ってるのか、先程のような動きがみられるか)捕獲した獲物を引きずった後などもヒントになります。判断が難しい状況下では、車を止めてトラッカー&ドライバーでのダブルチェックが行われます。

これは、別の日@AM Reserveで惜しかったのですが、足跡と合わせて判断してヒョウが獲物をひきずった跡ということです。昨晩ということで素人目に見てもはっきりと残っていたのですが残念ながら去った後でした。

道の分かれ目ではそうした動物の動きを総合的に判断して目的の動物がどっちにいそうかでトラッカーが方向を決めます(もちろん地形としてここにこの動物がよくいるというような要素もあるかと思いますが)。特にサイやヒョウは密度が低くよく移動するようです。

トラッカーの視線の動かし方は、ナイトサファリ(イブニングサファリ後半の日暮れ後)で分かります。ナイトサファリではライトを照らしながら探し、ライトの動かし方と視線の動きは基本的に一致します。トラッカー個人の特性にもよるかと思いますが、私たちのトラッカーは定速で直進している場合は概ね前方120度の範囲を左から右、右から左を基本に木の上、ブッシュなどをフォローしつつといった動きでした、木々の密集度などにもよりますが、大体1往復2秒程度のペースでした。

ただ、びっくりなのはその見つける対象のバリエーションです。

大きな動物や目の反射、Trackだけを見ているのかと思いきや、葉っぱとほぼ同色のカメレオンを見つけてきた時は驚きました。カメレオンと言われてライトを当てられても私たち(&その回同乗していたブラジル人カップル)には識別できません。しょうがないなーといった感じでドライバーが、車から降りて、枝を引っ張り出してカメレオンの形がようやく認識出来ました。これ ↓(かなりズームしています。あの場で肉眼ではここまで見えていません。)

他にも、不自然に朽ちている木があり「これはどうした?」と質問したところ、木の皮をぐるっと食べられたことにより枯れていて、食べられた位置から推測するとポキュパイン(Pocupine)だという説明がありました。その際ポキュパインという動物が分からずそれ以上深入りできませんでしたが、その直後サファリ中にトラッカーが道端に落ちているこれを見つけ私たちはそれがヤマアラシであることを認識しました。

更に別のケースでは、周辺に何もいないのに急ブレーキで止まりました。

その理由はこれ、Processionary Worm(行列いもむし)、名前の通り、隙間を全く開けずに行列しています。こんなものにも注意してるとは、トラッカーの検知能力にはびっくりです。ただ、本領発揮のハイスピードモードでは気付いていなかったり、気付いても見なかったことにしたりするかもしれませんが・・・

補足 : トラッカー&ドライバーの2名体制

こうした役割がそれぞれにあるということを考えると、2名体制の必要性がよく分かります。

この日のように最大能力発揮の際は、トラッカーは各種情報を総合判断して動物の動き、分布をイメージし、車の進行方向を指示します。ドライバーはそれに合わせて猛スピードで飛ばしつつ、細かな説明もありませんが、指であそこに動物~、鳥~とゲストが暇しないようにガイドします。これを1人でこなすのはパフォーマンスを大幅に落とすことになります、やはりトラッカーとドライバーはそれぞれいた方がいいということが分かります。

で、長い距離を飛ばしますが1時間これといった成果が見出せません。申し訳ないなーと思いつつも彼らは全然諦めません。

とその時、なんと私(嫁)が声を出します「ライノ!」。車の真横、高密度のブッシュに岩のようなグレーの塊が確認できます。前方120度の探し方には、道に近接した高密度の茂みに対し死角が生まれます。この後の休憩時間に確認しましたが、一番に見つけたのは私(嫁)ということは事実でした。私(嫁)曰く「前方での捜索は絶対に敵わない、であれば、我々素人は彼らをバックアップするためにも真横から後方を探すべきなのだ!」とドヤ顔です。そのまま気付かず行ってしまうことになったかどうかは定かではありませんが、この状況を可能にしたのは、遭遇確率を上げるアプローチをとって長い距離を走ってきたことによります。

8:00 サイとの遭遇

という経緯で見付けましたのでサイはかなり茂みの深い所にいます。

サイは非常に憶病で、でもあまり目は良くないと説明がありました。しかしながら車を動かして見やすい位置に移動しようとすると、サイも動いて見にくい位置に隠れてしまいます。顔をこちらに向けており草を食べている感じもしません、「何してるの?」と聞くと、「Just hiding from us.(ただ私たちから隠れている)」と。見えてんじゃん、さっきの説明は何だったの?と思いつつも、レア動物に遭遇出来て感激です。

ある程度観察、写真を撮ったら、逃げられるリスクを覚悟の上で現状打開にかけ茂みに分け入ります。分け入り方にも注意が必要です。ターゲットが逃げないギリギリの距離を確保しつつ、大きな音は極力抑え、パンクやスタックを避けるために切株やブッシュを踏まないよう、これも視点の高いトラッカーが車を誘導します。この時は、分け入った自車でサイの逃げ道を塞いだようで、サイは近づかれて移動したいけど出口方向には我々の車がいるのでどうしようといった感じでその場で1回転していました。

全方位から写真が取れてラッキーでした。きれいにメンテされた角を持つオスのシロサイでした。体の割に目が小さくユニークな顔をしています。

補足 : 分け入りのテクニック

そういえば初日のナイトサファリにおいても茂みに分け入ってライオンの進行方向真正面に車を着けました。先に別の車もいたのですが、私たちの車の方が先に分け入りました、ライオンも歩いていたのでそれを凌ぐ結構なスピードで。その時は横入りじゃね?いいの?という印象を持ちましたが、トラッカー&ドライバーにより得意不得意があるようです。もう一台はドライバーのみの体制で茂みの状況がよく見えなかったのか結局入ってきませんでした。

先回りされて、真正面で進路をふさがれ、顔にライトを当てられたライオンは、なんだよーと迷惑そうな表情をして立ち止まりました。その時の怖い位の迫力の写真がこれです ((((;゚Д゚))))))) 私(嫁)は、ライオンがキレてお前えらいいかげんにせーよと襲ってくるんじゃないかとビクビクしていたようです。

8:30 ショートブレイク

サイを見たあとここでいったん休憩です。

トラッカーがやってておいしそうだったチョフィー(ココアとコーヒーのMix)にラスクをディップして頂きます。ラスクは当初硬くて食指が伸びなかったのですが、確かにこうすればおいしくいただけます。さすがベテランのアイデアですねー、同様のシチュエーションの時は是非お試しください。

ビッグファイブの残りのうち1つを制覇したので、ガイド側も肩の荷が下りたのか雰囲気は悪くないです。

休憩しつつ、私(嫁)がサイを見つけたので、今度は私(旦那)がヒョウを見つけるようにと難題を出されます。「ヒョウを見つけるのにどこ探せばいいのか?」と聞いてみると、ヒョウはどこにいるか分からない、道路に寝そべっていることもあれば、茂みで遊んいることも、木の上で寝ていることもあると。「このあたりにヒョウはどの位の数いるのか?」という問いに対しては、ヒョウは(他にバブーンやプンバも)柵を乗り越えて移動するので、どのゲームリザーブ(GR)も何匹のヒョウがいるのか把握できないと、ただ、足跡やらのTrackで存在の痕跡は分かるとのことです。そんな人をあざ笑うような囚われない感じがヒョウの人気の秘密なのかもしれません。

9:00 A lot of ライオン

休憩を終えた後半戦開始早々に、道路に沢山のライオンの足跡があると説明があり足跡を追いかけます、

すぐ先で別のサファリカーが止まっており、道路に2匹のライオンが寝そべっています。トラッカー同士で現地語で何やら話をして、そこにいた一台が移動したと思ったら、遠くから回り込んで茂みの中に、、、茂みの中からぴょこっと頭が、、、こちらも分け入って、そこには確かにA lot of lionsがいました。道端のを合わせて全体で10匹程度、大きなグループです。

9:30 何かのサイン

その後、しばらくしてトラッカー、ドライバーが2人で話しつつ真剣な表情に変わっていきます。車の速度が落とされ、超絶探索モード、ちょっと話しかけづらい位のピリピリ感です。丘を登ると斜め前からはシマウマ&ヌーの大群がかけてきます。

その先にはバッファローの集団、本来であればなかなかのスケール&見栄えで止まってほしい所ですが彼らは心ここにあらずという雰囲気でした。30秒程度で速攻写真を撮ったら再出発です。

何かのサインを追いかけているようでしたが私たち素人には分かりません。

その先のジャンクションではどちらに進むのか方向が示せず、一旦車が止まります。2人で地面を注意深く見て首を傾げながら自信なさげに右に進みますが、しばらく進んでこっちじゃないと首を振って引き返します。

で、先ほどのジャンクションを別の方向に進みます、しばらく進んだ後、何の合図もなく道から外れて原っぱに入っていきます。トラッカーは笑顔で振り返り、しばらくして車のエンジンが切られます。???、、、

前方の木の上を見ると何かが引っ掛かっている!!!

ヒョウは、狩った獲物をライオンやハイエナに横取りされるのを避けるために、獲物を木の上に持ち上げる習性があるということをここに来る前にナショジオで勉強していました。ということは、あれはヒョウの仕業で、ここで待っていればヒョウが現れる???

ついに私たちは重要なサインを見つけたのか!!!

と思いきや・・・「あっ、、、なんかいる」、傍らの木陰に影が。。。

(写真左の大きな木の下から2つ目の枝分かれ部分にインパラが引っ掛けられています、中央下の2つの木影の奥側にヒョウがお座りしています。)

今回のサファリで確実にハイライトの部分ですが、簡単にあそこと教えずに最後の部分を自分たちで探させるのも演出なのかもしれません。トラッカーの笑顔は既にそこまで確認済みということです、おそらく車道から原っぱに入る前後で。プロフェッショナルです。

10:15 Finally

遠くから一通り、観察、写真を撮ります。日陰にいるので肉眼では表情はよく分かりません。ライオンより小柄、こちらを意識しているそぶりはありません。トラッカーの誘導により車を近づけます、獲物を持ち上げた木の真下につけました。

ヒョウは車で立ち上がったり、大きな音を出すと驚いて逃げてしまうという注意を初日に受けています、そんなに近づけて大丈夫なのか・・・

!? ヒョウが立ち上がります、逃げちゃうのか・・・

と思いきや、反転してこちらに向かってきます。

日向の中でお座りします、そして上を見上げます・・・

明るい中で顔をはっきりと見せてくれました、美人さんです。ネコ科は5年程度で鼻先が黒くなるとのことですがこの子はまだピンク、少なくとも5歳未満、小柄なサイズから判断すると相当若そうです。派手派手な模様は、半分枯れた原っぱの中では迷彩が有効に機能するのがよく分かります。

くるりと反転し元いた位置に、、、

まるでランウェイを歩いてきてポーズを取って帰っていくという感じです。尻尾も美しいです。

再び日陰に戻り寝そべります。

おそらく、車を木に近づけたので木の上にあげた獲物をとられると思ってこちらに出てきたのでしょう、でもこちらがそれに興味がないと分かり安心して元の場所に戻ったという感じでしょうか?そうした動きも予想しての車の動かし方のようです。

補足 : 追跡ルート検証

後でトラッカーに聞いたのですが、シマウマが本来避けるはずの車の方向に駆けてきた段階で近くにいるということの確信を持ったということです。

GPSの記録を分析してみました。ゲームリザーブの道は曲がりくねっているので位置関係がよく分かっていませんでしたが、確かにシマウマとヒョウがいた位置は300m程度しか離れていません。シマウマもヒョウがあそこにいることを認識していたということです。

1回のサファリで、非常にレアな動物であるサイとヒョウ両方に出会うことができ、私たちのみならず、ガイドたちも目的達成で達成感でいっぱいです。

ゲートへの帰り道ではみんなでシマウマに手を振りつつ帰りました。

まとめ

結局この日サファリを終えたのは10:30、6:45から4時間近いサファリとなりました(しかも、開始が6:45で遅めになったのは朝ロッジ付近で2匹のライオンを見つけていたためです)。

これから帰るとロッジ到着は11:00を過ぎます。もし複数台で来ていて、ゲートでの集合時間を決めていた場合は途中で諦めざるを得なかったかもしれません(もちろん、確実であれば2台で分担して追跡するケースもありうるでしょうが、その前にレアキャラのサイを見つけた段階で呼び寄せるのでそこで時間がかかりヒョウの痕跡を見つけるところまで行ってない可能性が高いです)。

最後のヒョウ探しにおいてサインを追いかけて、一度間違えてもUターンして最後には見つけられるというのはさすがでした。これは素人の偶然に任せた捜索では太刀打ちできないです。見つけてからも動物の行動を予測してよりよく観察出来るよう近付くテクニックも完璧です、3日間一度も失敗しておらずまさにプロフェッショナルでした。サファリのプロというがどういったものなのかがよく分かった1日でした。

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